第11回 為替マーケットコラム 2019年12月 相場のリバウンド

第11回 為替マーケットコラム

相場のリバウンド

先日はボーイング社のCEOが交代しました。現会長が社長になるだけなので、あまり代わり映えはしません。

それでも経営姿勢が前向きだということで、株価は復調の兆しを見せ始めています。737-MAX機が不都合になったので、いくぶんボーイング株が下がってきたのですが、1年前に史上最高値である446ドルをつけた後の、押し目が350ドル台です。

確かに20~30%の株価調整とも言えるのですが、3年前の株価は100ドル台であったことを考えると、現在の株価でも高すぎるのだとも言えなくもありません。

ボーイング株の足取り

 

これで膿出し終了ということで再び400ドル台に乗せてくることも考えられます。

これだったら悪い材料を提供して改善する振りをしていれば、それだけで株券はどんどんと買い上げられるという図式になってしまいます。

悪いことをすればいいと推奨しているようなものです。努力して利益を改善している会社は報われないのが正当化されるのかどうでしょうか。

 

過去の振る舞い

足下の実体が悪いのに、むしろ期待先行が優先して株価などが上がっています。

それまでの現実の状況において起こったロス分を反映しない相場展開はいくらでも過去にはあります。

 

21世紀に入ってまず記憶に新しいところでは2001年秋の9-11テロのときでしょう。

飛行機がビルに激突した映像が流れて、それはたいへん大きなショックを社会に与えました。

そして米国市場は3週間ほどもストップするのを余儀なくされました。

 

10月になってマーケットは再開しましたが、時間がかなり経過していたこともあり、恐怖感はだいぶ薄らいでいました。

確かに10月中に米国株は年初来の安値を更新したのですが、すぐに切り返しました。むしろショートカバーが優勢となって、11月には下げ分をほぼ回復。

そして12月には年初来の高値を伺うほどまでリスクテークの流れが強まったのです。

 

まだ米国経済が本格的に立ち直っていないし、軍事的報復がどうなるのか、まだ不透明な状態であったのですから、期待だけで株価の上昇は保たないはずです。

そして実体を伴う株価の下げは翌年の秋に持ち越しとなりました。

2番底からの立ち直りを確認するためには、アメリカのイラク攻撃が実施される2003年春を待たねばなりませんでした。

 

現在のアナロジー

トランプ政権のやっていることを振り返ってみても、同じような事を演出していると見られます。

米中の貿易戦争ひとつ取ってみてもそうです。「部分的な合意」ができたとして、市場の不安感が払拭されたことを好感して米国株などは連日の史上最高値を更新してきています。

 

合意できたこと自体は確かに好材料なのですが、よく考えると貿易の外部環境はその騒動を起こす前よりも悪化しているのです。

追加関税は緩和されたとはいえ、相変わらず残っているわけですし、明らかに企業にとっても消費者にとってもコスト増になっています。

それにも関わらず、株価は高い水準を追いかけているのです。
S&P先物の週足

 

貿易戦争を引き起こす前よりも状況が悪いわけですし、少なくとも関税は高いのですから、貿易戦争が始まる前よりも株価は安くても構わないはずです。

これがファンダメンタルズ重視の姿勢というものです。

それが跳ね上がっているのですから、現在の株価が間違っているのか、それともファンダメンタルズが間違っているのかのどちらかです。

ファンダメンタルズの方が間違っているとしたら、誰もまともに投資をする意欲がなくなるでしょう。

実際には何も生み出さなくても、闘争や軋轢を生み出しておけば、それを修繕する姿勢を示すだけで手持ちのお金が増えるようなことがあるわけがないのですから。

 

2019年のマーケット

株価のほうはすでにお話ししてきたことですが、米国株を始め、リスクオンの流れが強まった1年でした。

そもそも昨年末に株が売られ過ぎていて、安いところから今年が始まったという要因もあります。

金利サイドは明らかに緩和方向に向かった1年でした。

 

FRBは否定はしているものの、結局のところ、トランプ大統領の利下げ要請に屈したと見られても仕方がありません。

その証拠に米国株は多少の修正があったにしても、やはり依然として歴史的な高値近辺に張り付いたままだからです。

その状況下での連続利下げです。将来の教科書にはどのように説明を施すのでしょうか。

 

そして為替相場は実に動きの少ない1年でした。

ドル円は1年間で10円動くものだとされてきたのですが、2019年は7円ほどしか動いていません。

しかも取引されているボラティリティも年を通じて低いままでした。BREXITでイギリスは揉めに揉めたにも関わらず、ポンドドルなども値幅は決して大きくはありませんでした。
ドル円の週足

 

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持田 有紀子

持田 有紀子

<略歴>
慶応義塾大学法学部政治学科卒。国際政治及び東アジアの地域研究を専攻。

同大新聞研究所(現メディア・コミュニケーション研究所)修了。

野村証券入社。エクイティ部門の日本株トレーダーやワラント債、オプション課、営業課など。その後は人事コンサルティングの分野でも活動し、行動科学や心理学に基づく人事評価のモデルの開発等に携わる。

21世紀に入って起業した後は、海外の先物市場や外国為替取引のノウハウの蓄積を活用した投資情報の提供、セミナー講師、海外ファンドの運用、トレード塾の運営などを手がける。


<著作物>

「外国為替取引(FX)はこうして稼ぐ」 明日香出版

「日経225/日経225ミニ 日経先物取引の戦い方」 明日香出版社

「FX 練習帳」 実業之日本社 「夜の外国市場で儲けるテクニック」 明日香出版社

「FX 最強投資術」 実業之日本社 「利確と損切りのタイミングを読む」明日香出版社

「学校では教えてくれない投資と金融の授業」 明日香出版社


<連載コラム>

ザイFX「戦う女のマーケット日記」(ダイヤモンド社)
http://zai.diamond.jp/list/fxcolumn/mochida


<持田有紀子公式ブログ>

http://ameblo.jp/mochidayukikodesu/


<自己紹介>

野村證券の初期女性総合職としての兜村が、私の仕事の出発点でした。

金融マーケットに関わる人々やものごとの酸いも甘いも嚙み分けて、大規模な組織に属しない一個人でも、どうやったら戦い続けることができるのかを追求してきました。

金融マーケットへのアクセスは誰にでもかなり容易になった昨今、価値ある有意義な情報を一人でも多くの人に届けたいと考えています。

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