第17回 為替マーケットコラム 金融政策の限界

持田 有紀子のマーケットコラム「金融政策の限界」

金融政策の限界

FOMCでは何が期待されているのでしょうか。すでに電撃利下げを2回もやって、短期金利はゼロ金利となっています。

クレジットの悪いものすなわち信用力が低いものまで含めて社債やCPを買い上げるということで、量的緩和の側面も強化しました。

 

一時は期待が持ち上がったマイナス金利政策も、これだけ株高の状態になってしまうとやりづらいです。

あとはイールドカーブコントロールくらいしか言及のしようがないのですが、コントロールできるとは言い切れないのが当局のつらいところです。

元議長のグリーンスパンも「長期金利のなぞ」と言ったくらいに、長期金利を恣意的に動かすのは困難だからです。

 

コロナバブルへの対処

株価はEPSとPERをかけ算したものです。一株あたりの利益の額がEPSであり、それを何回分だけ回収すれば株価の元を取れるのかというのがPERです。

ですから株価が上昇するときは、EPSが上がるかPERが上がるかのどちらかになります。

EPSとPER

 

EPSは利益だから比較的、定量化しやすいですし、近い将来の予測も立てやすいです。

一方でPERは過去の平均と比べてどうだったかということくらいしか参考になりません。

 

PERは15倍くらいが普通の状態だと言われていますが、今年の2月に米国株が史上最高値を記録しているときは20倍近くもありました。

これは足下で捻出されている企業利益に対して、期待だけが大きく先行しているということを表します。

 

現状ではロックダウンもあったことですし、企業利益は大きくへこんでいます。

将来のEPSの回復見通しには明るい見込みもあるですが、足下では米国株のPERが25倍まで膨れ上がってきています。

 

これが期待先行ということで解釈すればいいのか、それとも単に割高なのを承知していて、それでも投資家が盲目的にリスクテークしていることの証明なのか。

それは時間が経ってみないとわかりません。

こうしてわからない状態が続いていると市場参加者はどう反応してよいのかわからず、為替相場でのリスクへの反応もしょぼいものに終始してしまうことになってしまうかもしれません。

 

企業利益に基づいた値付けをバリュー重視といいます。

この立場から見れば、バリューからかけ離れた動きはそう長くは続かないことになっています。

 

想定していないことが起きたということでは、9-11テロの時が参考になります。あのときも9月に飛行機が突っ込んだときはパニックになって、10月まで株はそれなりに下押しはしましたが、年末にかけて年初来の高値をつけるなど、大きく株価上昇を演じているのです。

そして本格的な下げは翌年に来たのです。今回のコロナ騒動でも、今後の1年くらいが要警戒といえるでしょう。

 

欧州復興ファンドに至るまで

欧州復興ファンドが現実味を帯びてきたのですが、いよいよ具体的な案を練りだしてくる過程になると、EU各国の合意が得られにくいことが露わになってきました。

しかしながらそれぞれの財政規律に対する立場が大きく隔たっているので、合意が困難なのは当初からわかっていたことです。

 

共同拠出が可能であれば、とっくにEUは財政統合もやっているはずだからです。

財政統合できずに、表向きの金融統合だけを先行させてきたからの欧州危機があったわけです。

 

今回の共同出資も、反対に回っているのはオランダやドイツなど、時刻だけでも救済プログラムを実行できるほど財政支出に余裕がある国です。

共同形式にすると、支払う金額の方がもらえる金額よりも多くなることが予想される国でもあります。

EUという広域行政の理念には関心があるものの、タックスペイヤーとしての自国民を納得させることができません。それでは次の選挙で落ちてしまうからです。

 

6月中旬にも欧州復興債が話題となりました。配分に関して合意に至らなかったということで、ユーロ安の状態が続きました。

ポンドドルも一段安していましたが、これはユーロ売りという欧州通貨安に押されたのに加えて、BREXITの期限までの円滑な手続きが完了できるのか、ますます不透明感を増してきたからです。

 

そういうわけで欧州通貨の値下がりリスクがやや鮮明になってきました。これにドルにとっての良い材料が加わると、ユーロドルやポンドドルはフレッシュゾーンへ一段安することになるかもしれません。

とりあえずは前日の高値までを戻しの限度と想定して、毎日のショート攻めするのが得策となりそうです。

ユーロドルの日足

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持田 有紀子

持田 有紀子

<略歴>
慶応義塾大学法学部政治学科卒。国際政治及び東アジアの地域研究を専攻。

同大新聞研究所(現メディア・コミュニケーション研究所)修了。

野村証券入社。エクイティ部門の日本株トレーダーやワラント債、オプション課、営業課など。その後は人事コンサルティングの分野でも活動し、行動科学や心理学に基づく人事評価のモデルの開発等に携わる。

21世紀に入って起業した後は、海外の先物市場や外国為替取引のノウハウの蓄積を活用した投資情報の提供、セミナー講師、海外ファンドの運用、トレード塾の運営などを手がける。


<著作物>

「外国為替取引(FX)はこうして稼ぐ」 明日香出版

「日経225/日経225ミニ 日経先物取引の戦い方」 明日香出版社

「FX 練習帳」 実業之日本社 「夜の外国市場で儲けるテクニック」 明日香出版社

「FX 最強投資術」 実業之日本社 「利確と損切りのタイミングを読む」明日香出版社

「学校では教えてくれない投資と金融の授業」 明日香出版社


<連載コラム>

ザイFX「戦う女のマーケット日記」(ダイヤモンド社)
http://zai.diamond.jp/list/fxcolumn/mochida


<持田有紀子公式ブログ>

http://ameblo.jp/mochidayukikodesu/


<自己紹介>

野村證券の初期女性総合職としての兜村が、私の仕事の出発点でした。

金融マーケットに関わる人々やものごとの酸いも甘いも嚙み分けて、大規模な組織に属しない一個人でも、どうやったら戦い続けることができるのかを追求してきました。

金融マーケットへのアクセスは誰にでもかなり容易になった昨今、価値ある有意義な情報を一人でも多くの人に届けたいと考えています。

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