第21回 為替マーケットコラム 票読みの誤算

持田 有紀子のマーケットコラム 票読みの誤算

票読みの誤算

前回の大統領選挙では、事前のマスコミ予想ではヒラリークリントンの優勢がずっと報じられていました。

それなのにトランプ大統領になったのは驚きを持って迎えられたのは記憶に新しいところです。なぜ多くの大メディアがクビをそろえて外したのか、しばらくの間、議論の対象となったほどです。

 

落ち着いた先としては、実際に投票所まで足を運んで投票するのと、電話などを通じてアンケート調査で答える内容とでは違うらしいということでした。

確かにトランプ氏の選挙公約は過激なものが多く、それを支持していると口に出すのははばかれる空気ではありました。

ですからあえて「トランプ支持」だと表明した人は思いのほか、少なかったと言うことでしょう。

 

小さい政府

共和党と民主党の方針の違いは、概ね大きい政府を目指しているのか、小さい政府を目指しているのかで区分されます。

政府が大きいか小さいかは財政規模の大きさによるものであり、社会活動に対する政府の関与の大小とも言えます。

 

もちろんアメリカは自由の国であり、自活が前提になっている国家体制ですから、基本は小さい政府が標榜されています。

しかし格差是正や経済対策などで、アメリカも小さい政府が良いとばかりは言えなくなってきています。

 

保守とリベラル

共和党と民主党は保守とリベラルという分け方もされます

保守が現状維持で、リベラルが改革とみられることも多いのですが、法律を改廃するという観点から見ればどちらも改革派です。

 

保守もリベラルも現状維持では満足していなくて、通したい法案がいくらでもあるのです。

現状維持でよいとするのを中道派と呼ぶ方が適正でしょう。

 

保守派の改革というのは、宗教面でも対外政策でも原則に戻りたがる傾向にあります。

保守派が主張するところでは、現在は原則に従っていないルーズな状態だというのです。保守もリベラルもなかなか簡単に主張が通りません。

ましてや法律にするのはもっと困難です。

 

保守の政策で言えば、人工中絶の禁止とか移民の制限などです。リベラルの政策で言えば、国民皆保険や銃規制などです。

どれも国民を2分するような突拍子もないものだからです。

 

70年代のニューヨーク

ニューヨークは世界の3大都市の一つなのですが、昔は治安がとても悪かったです。

オーバーに伝えられていた面もあるのでしょうが、それでも路地裏に連れ込まれて銃を突きつけられて、お金を出さなかったら殺されるとよく言われたものです。

 

また地下鉄はペンキで落書きだらけで、不良みたいなのばかりが乗っていて、普通の人は地下鉄を使わないとさえ言われていました。

これは1970年台くらいまでの当たり前の光景で、ニューヨークには気軽には行けないものと思われていた時期がありました。

 

80年代の双子の赤字時代を通じてアメリカは苦しんだのですが、それと同時に街の浄化にも励んだようです。

警察の予算も増加され、犯罪を野放しにすることは少なくなっていきます。今では観光客も殺到し、ギャングやマフィアなどに恐れることもなくなったのです。

 

BLM運動

犯罪の取り締まりの強化によって反映を取り戻したニューヨーク。

取り締まりをきつくして、怪しいやつを刑務所に放り込んでおけというのは保守派の主張です。保守派は自分の生命と財産を守ることにかけてはやかましいです。

 

もちろんそこには行き過ぎもあるのですが、それを人権重視などといって擁護しようとするのがリベラル派です。白人警官が黒人を暴行して問題になっていますが、これはリベラル派から見た意見です。

黒人警官が白人を撃ってもニュースにならないだけというのが保守派の意見になります。

BLM運動

 

保守派の怒り

警官が不必要な暴力を振るうなというのは当たり前のことなので、リベラル派が正しいように見えます。

しかし過剰な行動があったにしても、自分の住んでいる家や家族が守られるのであれば、それはそれで仕方がない、むしろ緩めないでくれと考えている人も多いのです。

こういう人たちは「もっと激しくやれ」とは言えないから、少数派のように見えますが、声が小さいイコール少数派ではないのです。

 

アメリカは民主主義国家なので、多数の意見であれば法律はいくらでも改正できるはずです。

それができないということは、いったい多数派はどちらなのでしょうか。

少なくとも「怪しい黒人は追い出せ」と口にできない以上は、デモの騒動の大きさだけを見てリベラル派が優勢と判断するのは早計でしょう。

 

ドル円

前回の選挙ではトランプ氏の当選が確実になった時点で、リスク回避の円買いが強まり、ドル円は101円台まで差し込みました。

しかしその後の急激なリスクテーク安心感から1ヶ月後には118円台まで値を上げました。しかしその後の4年間はそのどちらもはみ出さず、目下のところ、105円台を中心にしたコアレンジを形成しつつあります。つまりは、ドル円の動きが乏しくなったと言えます。

ドル円の月足

 

今回の予想

今回の予想としては、トランプ氏が勝利であればリスクオン、バイデン候補が勝つようであればその反対になると見込まれています。

しかし今回は即日開票に合わせて当選確実が出るかどうか、微妙な情勢となっています。

 

ひとつには郵便投票による選挙方法です。すでにトランプ陣営は郵便投票では不正がはびこると言ってやまないです。

それに伴って政権移行のための作業がスムーズに運ぶかどうかも問題になっています。記者会見の中でトランプ大統領は、政権移行は妨げないとの発言を拒否したから、なおさらでしょう。

したがって前回の選挙のときのように素直にマーケットは反応できないかもしれないのです。

テレビ討論会

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持田 有紀子

持田 有紀子

<略歴>
慶応義塾大学法学部政治学科卒。国際政治及び東アジアの地域研究を専攻。

同大新聞研究所(現メディア・コミュニケーション研究所)修了。

野村証券入社。エクイティ部門の日本株トレーダーやワラント債、オプション課、営業課など。その後は人事コンサルティングの分野でも活動し、行動科学や心理学に基づく人事評価のモデルの開発等に携わる。

21世紀に入って起業した後は、海外の先物市場や外国為替取引のノウハウの蓄積を活用した投資情報の提供、セミナー講師、海外ファンドの運用、トレード塾の運営などを手がける。


<著作物>

「外国為替取引(FX)はこうして稼ぐ」 明日香出版

「日経225/日経225ミニ 日経先物取引の戦い方」 明日香出版社

「FX 練習帳」 実業之日本社 「夜の外国市場で儲けるテクニック」 明日香出版社

「FX 最強投資術」 実業之日本社 「利確と損切りのタイミングを読む」明日香出版社

「学校では教えてくれない投資と金融の授業」 明日香出版社


<連載コラム>

ザイFX「戦う女のマーケット日記」(ダイヤモンド社)
http://zai.diamond.jp/list/fxcolumn/mochida


<持田有紀子公式ブログ>

http://ameblo.jp/mochidayukikodesu/


<自己紹介>

野村證券の初期女性総合職としての兜村が、私の仕事の出発点でした。

金融マーケットに関わる人々やものごとの酸いも甘いも嚙み分けて、大規模な組織に属しない一個人でも、どうやったら戦い続けることができるのかを追求してきました。

金融マーケットへのアクセスは誰にでもかなり容易になった昨今、価値ある有意義な情報を一人でも多くの人に届けたいと考えています。

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