財政規律
3月における市場の関心は米長期金利の動向でした。
米国債の相場が下がればリスク資産の値段も下がるというもので、いわゆる金融相場の展開となってきています。
これは金融当局の姿勢を試されている場面でよく起こる現象です。
財政の面では、米議会はこれから1.9兆ドルのコロナ予算を通過させようとしています。
年間の予算規模に匹敵する額です。
財政に厳しいドイツですらも大規模な支出をしていることで、他の国も安心して支出を増やしているようです。
欧州は過去の経緯からインフレには敏感とされています。それなのにすっかり現状に慣れてしまっていて、インフレを気にしなくなってきました。
多少のインフレの芽が見えだしたにしても、それを見ないようにしているようでもあります。それがあって長期金利の上昇が現実に起こると、必要以上に恐怖に陥ってしまうのでしょう。
アメリカの金融政策
これまでと環境が変わってきたのは事実です。コロナ感染の拡大が一段落し、ワクチンの摂取率も増えてきました。
生活スタイルの回復が期待されており、米国株も史上最高値の圏内を維持しています。これまで2023年の末まで金利は引き上げないとしていたのも、果たしてそのまま放置しておいていいのかという意見が出てきています。それを先取りする形で長期金利はやや上昇の傾向を示したのですが、まだ本格的なタイトニング・モードに入っていません。
今回のFOMCの注目点としては、今ぐらいの長期金利の上昇ならば追認するのか、それとも何らかのオペを行ってさらなる上昇に歯止めをかける意思を示すのかどうかでした。
もしも「雇用の回復は十分ではない」といった従来のコメントを繰り返すようでしたら、市場との対話ができていないということで、しばらくは不安定な相場展開となることも予想されました。
FOMCでは総じてハト派的な内容に終わりました。
2023年末までは利上げは行わないとし、また利上げのタイミングを議論するステージでもないとしました。
長期金利の上昇に対策が示されることはなく、テイパリングについて踏み込んだ議論もなかったようです。
テレビや新聞での記事では、FOMCでのアクションについて賛否両論となっています。
上手くいったことになるのか、市場との対話が取れていないのか、意見が分かれているようです。
FOMCが終わった後のマーケットの動きを見れば、無難に消化したともいえます。
しかし市場の期待、すなわちタイトニングの議論を始めないと悪性のインフレが起こった場合に打つ手がなくなるよというマーケットの警告は無視した形ともなっています。
今回のFOMCの成否はもうちょっと時間をかけて見ていくしかないでしょう。いつまた再びドルの長期金利が高騰するかもしれないのです。
日銀の政策点検
日銀の点検というのは、かなり拍子抜けする内容でした。
なにか特筆すべき事項でもあるのかと思えば、単なる長期金利の変動幅の微調整と、ETF購入の中身をトピックス銘柄に集中させるというだけでした。
ほぼ前日までに報道されもしている予想されていたものと同じでした。
後はその正当性を主張するだけで、どういう効果があったのか、短期的であっても今後の目標は何なのかはまったく示されませんでした。
利上げの催促
この後に念頭に置いてかないといけないのは、世界は徐々にコロナ感染から立ち直りつつあり、それがダイレクトにインフレ懸念に結びついているということです。
とくに新興国では短期金利にも影響が出始め、先週はブラジル中銀が予想を上回る利上げに踏み切りました。
トルコ中銀も同様でしたし、そしてロシア中銀も金融スタンスを緩和から中立に引き上げました。
3年前までの利上げモードのときもそうだったのですが、まずは弱いところからインフレに後押しされる形で利上げを強いられます。
ですが肝心のアメリカがなかなか利上げに転じないものですから、それが余計に事態を悪くするのです。この図式は今回も同様でしょう。
トルコリラは大幅利上げしたにもかかわらず、アクションをした中銀総裁をクビにしてしまったことで、政情不安のほうを嫌気して大幅安となりました。
ドルの金利上昇の圧力が強まることが予想され、4月以降もドル高バイアスがかかるものと思われます。