第29回 為替マーケットコラム  2025年問題

2025年問題

トランプ政権が終わったことで、日本もグリーン政策に積極的に関与することとなりました。

2030年までの中期目標を出したことで、新規の政府資金も出やすくなったことで、関連銘柄も株価を上げています。

 

しかしそれはいいとこ取りのかたちを免れないともいえます。

というのも、2030年を迎える前に、30年前から指摘されていた2025年問題が立ち塞がっているからです。

 

2025年問題というのは、団塊の世代とされる75歳の人口がピークに達する時期を迎え、社会保険制度が最大の危機を迎えるとされているのです。

 

とくに年金に関しては管理機構を作って、150兆円以上のため込みを準備しています。

その資金運用の方面だけが注目されていましたが、忘れてはいけないのはそれが早晩に払い出しに回るということです。

すべての金融資産が売り出されるのですから、そのインパクトは大きいでしょう。

 

売り払う必要はなく貯め込んだままでいのであれば、当然、現在のものすごく高い年金保険料を引き下げろという声が上がってくるはずです。

その最大の売り手の存在に対して評論家などは誰も口を開きません。

東京オリンピックの中止と同じ様なもので、誰も猫の首に鈴をつけにいく人がいないのです。

 

国際競争力

G7の金融サミットが行われました。そこでアメリカ主張する法人税率の最低限度を15%にすることが合意されました。

すでに主要各国の間では水面下での合意は取り付けてあったであろうものの、G7での公式な声明に載ったことは来月のG20でのコンセンサス作りにも役立つでしょう。

G20のほうが中国やロシアも含まれているため、国際的な強制力という意味ではG20で合意することは意義があります。

 

15%という数字は低すぎる目標のようにも思われますが、これは米系の大手IT企業がアイルランドなどに本籍を置いているのを牽制するためもありそうです。

法人税率が低すぎる国がどのように対処するのかどうかです。

シンガポールや香港も含め、それが今後の見ものです。

国際標準に合わせるのか、スイスのように国際社会に対して一歩の距離を置くのかです。

 

G7ではデジタル課税のあり方にも一定の理解が示されました。

サービスを提供している場所での課税を認めるというものです。

税金は取れるところから取らなければいけないという減速が再確認された格好です。

 

この後、マーケットの関心となるのは、大手IT企業の株価の行方になります。

従来のように企業利益にフルに計上できなくなるからです。内部留保に振り向けていた分も必然的に少なくなるでしょう。

それは将来の予想EPSを引き下げる効果を持ちます。株価の下落が深刻なまでに起こるのかどうかは留意しておくべきでしょう。

 

実質金利

6月中旬はコモディティ価格の下落が目立ちました。

金や銀といった貴金属、それに石油やガスといったエネルギーです。それに加えて食料品などについてもです。

これはひとえにFOMCのなかで2023年には2回の利上げを見込んでいたということの判明が大きいです。

コモディティというのは金利が付かないので、金利上昇には弱いものだとされています。それがモロに出たわけです。

大豆価格の日足

 

その一方でFOMC後のドルの長期金利は低下しています。

10年ものの利回りは1.4%台を下回ってくるなど、5月以前の水準まで戻しつつあります。

長期金利は名目金利、コモディティ価格はインフレ期待と考えることができるので、その差額であるはずの実質金利が大きく上昇したことを意味します。

ドル長期債の日足

 

そうしたドルの実質金利の上昇を素直に反映したのが、ドル相場ドルだったといえます。

6月に入ってから方向感の出ない展開が続いていた為替相場でしたが、FOMCでのタカ派的な意見表明で一気にドル高の流れが出てきました。

ドルは全面高となっており、ユーロドルやポンドドルは久しぶりの安値圏となりました。そしてドル円は年初来の高値を捉える位置まで上がってきています。

ユーロドルの日足

  • この記事を書いた人

持田 有紀子

<略歴>
慶応義塾大学法学部政治学科卒。国際政治及び東アジアの地域研究を専攻。

同大新聞研究所(現メディア・コミュニケーション研究所)修了。

野村証券入社。エクイティ部門の日本株トレーダーやワラント債、オプション課、営業課など。その後は人事コンサルティングの分野でも活動し、行動科学や心理学に基づく人事評価のモデルの開発等に携わる。

21世紀に入って起業した後は、海外の先物市場や外国為替取引のノウハウの蓄積を活用した投資情報の提供、セミナー講師、海外ファンドの運用、トレード塾の運営などを手がける。


<著作物>

「外国為替取引(FX)はこうして稼ぐ」 明日香出版

「日経225/日経225ミニ 日経先物取引の戦い方」 明日香出版社

「FX 練習帳」 実業之日本社 「夜の外国市場で儲けるテクニック」 明日香出版社

「FX 最強投資術」 実業之日本社 「利確と損切りのタイミングを読む」明日香出版社

「学校では教えてくれない投資と金融の授業」 明日香出版社


<連載コラム>

ザイFX「戦う女のマーケット日記」(ダイヤモンド社)
http://zai.diamond.jp/list/fxcolumn/mochida


<持田有紀子公式ブログ>

http://ameblo.jp/mochidayukikodesu/


<自己紹介>

野村證券の初期女性総合職としての兜村が、私の仕事の出発点でした。

金融マーケットに関わる人々やものごとの酸いも甘いも嚙み分けて、大規模な組織に属しない一個人でも、どうやったら戦い続けることができるのかを追求してきました。

金融マーケットへのアクセスは誰にでもかなり容易になった昨今、価値ある有意義な情報を一人でも多くの人に届けたいと考えています。

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