ドル金利のベンチマーク
米ドルには多くの種類の金利が存在しているのですが、それらが活発に取引もされています。分類する基準はおおむね、短期か長期か、借り手の主体は何か、当局の規制を免れているかどうか、などです。
マーケットで金利動向を見るには、もっとも取引量の多いものをウオッチするのがよいです。
そうなると米ドル金利のベンチマークは、ドルLIBORと、米国債10年ものの利回りだということになります。
LIBORは銀行間での適用金利ですから民間の金利なのですが、国に適用される金利と連動しているため、金利の上下動だけを問題にする分には特に官民スプレッドは気にしなくてもよいのです。
大事なのは十分な流動性が保っていられる金融商品かどうかということです。
短期金利と長期金利はほぼ同じような動きしかしません。
これは5分とか10分といった短い時間で見てもそうですし、1日や1週間といった長い期間を対象にしても同じことが言えるのです。
ともに先物取引がアクティブであり、ドルLIBOR先物か米債先物か、自分の興味のあるほう一方だけを見ていればよいということになります。
ドル金利の動向
ドルの短期金利を見ていきましょう。ドルLIBOR先物の値段です。中心限月は9ヶ月ほど先のものとなります。したがって1年先の短期金利を見ていることになります。
昨年2018年の11月に3.20%台までの高水準をマークしました。
これは最後の利上げの直前の時期でした。利上げの最終局面でもあったわけですし、さらなる利上げも同じようなペースで見込まれていました。
1回0.25%の利上げが四半期ごとに行われるというものです。
ですから足下の短期金利が2.00%から2.25%だということを考え合わせると、将来の1年間では4回分の利上げが織り込まれているという状況だったのです。
それが先月の6月末には1.50%までの急低下を演じることとなりました。
これは目先の利上げ期待が吹っ飛んでしまっただけではなく、今後の1年間に3回分以上の利下げまでをも織り込んだことを意味します。
半年で1.75%ポイントもの金利低下は、さすがに激しいものがあります。それだけFRBの金融スタンスへの姿勢の激変が見られたということです。
ブラード総裁の発言に始まり、クラリダ副議長、そしてパウエル議長の追認もあったので、利下げ期待は過度なまでに膨らみました。
過度な利下げ期待
市場では「予防的な利下げ」だとしています。しかしその割には年内に3回、来年までに4回以上も利下げするというのは、いかにもやりすぎの感じはします。
しかし実際に取引されている値段がそう言っているのですから、仕方がありません。本格的な景気後退が来るのを恐れているのか、それとも金利先物の値の方が間違っているのでしょうか。
FRBが心配している要因として地政学的リスクや米中協議の行方などがあげられますが、現行の株価を見る限り、まったくのリスクテーク一辺倒です。
米国株は史上最高値を演じている。「不安だから」とか「心配だから」といっていたら、きりがないのです。株価が高いうちは利下げをするだけの正当性がありません。
ですからトランプ大統領の圧力に屈して利下げするにしても、小幅なままにとどまるのではないか、との懐疑的な見方も多いです。
それだけ利下げ期待の市場での折り込み分が強すぎるのです。
行き過ぎの反動
今後の市場がどのような経路をたどるのかは、今の時点ではわかりません。
しかし過度な期待の分が剥げるときの相場の動きは念頭に置いておいてしかるべきでしょう。
言うまでもなく、金利商品の値段は下がります。ドル金利が上昇して落ち着きどころを探るということです。
金利低下を好感して上がってきた株価も、早晩に大きな修正を強いられるかもしれません。
その過程で為替相場でもドルの見直し買いが入りそうです。勢いに乗ってドル円などは111円台くらいまで戻しきる局面があっても驚かないという姿勢を持つことが必要です。
ユーロドルもドル高が進む局面で、2年ぶりとなる1.10台に突入ということもありえそうです。
ユーロドルの方はかなり長い間、サポートされてきた分だけ、下抜けすると結構、大きな下げ相場となるかもしれません。