第7回 為替マーケットコラム 2019年8月 世界的な利下げモード

第7回 為替マーケットコラム  世界的な利下げモード

世界的な利下げモード

世界の主要国が利下げを開始しはじめています。トルコやブラジルはインフレ的にこれまで上げすぎてきた分の調整だとも考えられますが、景気の悪化による利下げも目立ってきました。

韓国やインド、オーストラリアやニュージーランドといったところです。それに追随する形でタイやインドネシア、フィリピンなども利下げを始めています。

 

中国やロシアも緩和スタンスを変えていないので、アメリカの「予防的利下げ」は肯定的に受け止められています。

つい先頃まで過度な利下げ期待だと言っていたのに、昨今では年内にはもう75ベーシスポイント分だけ利下げがあってもおかしくないという状況になってきたのです。

短期金利の相場のほうが間違っていて、そのうち調整が起こるだろうと考えられていたわけですが、やはり市場は正しかったということになりそうです。

それだけ世界的に金融緩和の方向へのプレッシャーが高まっているのです。

ドルの短期金利

 

次の不満は為替へ

トランプ大統領はFRBの金融政策にいろいろと要求を突きつけてきましたが、いよいよ為替レートについても矛先を向けだしはじめましきた。

明確にドル高が米製造業の競争力を削いでいるとして、通貨安競争を牽制しています。中国を為替操作国に認定したのも、その一環でしょう。金利の次は為替だということです。

 

確かにドルは高い状態です。独歩高です。

為替の王様であるユーロドルはまったく上がりませんし、ここ2、3年は下げっぱなしで安値張り付きです。ポンドはBREXITという固有の問題があるにしても、ポンドドルは市場最安値を目指しています。

トルコや韓国、南米通貨はみなドル高です。そして中国元が対ドルで7.0を越えてきたことが、ドル高の象徴ともなっています。

こうした環境ではトランプ大統領による通貨安競争の牽制はもうしばらくは続くものと見なければならないでしょう。場合によってはG20など国際的な場での課題に付されることになるかもしれません。

中国人民元

 

ドル円は年初から下がっているので、ドル高でなさそうに見えます。

しかしこれだけ外部環境の悪化もあってリスク回避の姿勢が強まっているのに、ドル円が3、4円しか下がっていないというのは実質的にはドルの腰が相当に強いものだと考えなければいけません。

すでに95円とかを割り込んでいてもよさそうなものです。いまだに105円台などに居続けるのはドル高のせいだとも言えるでしょう。

 

ユーロドル

世界的に金利が低下傾向をたどる中、ユーロは9月にも追加緩和を行いそうです。

それを反映してユーロドルは安値圏で張り付いたままとなっています。今年の安値である1.1027を底にして、何度も跳ね返されている状況が続いており、1.1000という大台のレベルが心理的節目として強力なサポートとしてワークしています。

ドルの金利低下とユーロの金利低下のせめぎ合いといったところなのですが、ユーロの下げ圧力のほうが勝っていると言えます。

ユーロドルの日足

 

ユーロドルが1.10台で下げ渋っていればいるほど、この水準でのユーロロングがどんどんと溜っていくことになりますので、1.10割れで大きなステージ変化をもたらすことになるかもしれません。

それだけ大量のユーロの投げ売りが出てくるはずであり、またそれに従って相場のステージ自体が下方向に変化してしまうことを意味します。

 

もちろんこのまま新安値を付けにいけるかどうかの予測は不可能です。

しかしもしも1.10台の大台割れが起これば、それは2年ぶりの安値水準でもあり、テクニカル的には1.03台まで押し込まれても不思議ではなさそうです。

タイミングとしては9月の第2週のECB会合か、第3週のFOMCになるのかもしれません。

 

ドル円

一方で日本のほうは金融政策的には手詰まり感が強いです。

短期金利をこれ以上マイナス幅を深掘りすると、地銀だけにとどまらず、都銀まで収益悪化が表面化してくるでしょう。つまり事実上の深掘りはできないということです。

また長期金利フォローのための国債などの資産買い上げも、お金はあっても買うべき玉がなくなってきています。その上、日銀のバランスシートの膨らみも放置できない状況です。

 

世界的な金利低下の状況下、相対的に円の金利だけが強まるということになります。

ただでさえリスク回避時には買われやすい円であるが、このまま金融緩和モードが進めば、円保有の選好性がより高まるのも当然です。

年末に向けてドル円の下げ圧力は増大するものと考えられます。

 

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持田 有紀子

持田 有紀子

<略歴>
慶応義塾大学法学部政治学科卒。国際政治及び東アジアの地域研究を専攻。

同大新聞研究所(現メディア・コミュニケーション研究所)修了。

野村証券入社。エクイティ部門の日本株トレーダーやワラント債、オプション課、営業課など。その後は人事コンサルティングの分野でも活動し、行動科学や心理学に基づく人事評価のモデルの開発等に携わる。

21世紀に入って起業した後は、海外の先物市場や外国為替取引のノウハウの蓄積を活用した投資情報の提供、セミナー講師、海外ファンドの運用、トレード塾の運営などを手がける。


<著作物>

「外国為替取引(FX)はこうして稼ぐ」 明日香出版

「日経225/日経225ミニ 日経先物取引の戦い方」 明日香出版社

「FX 練習帳」 実業之日本社 「夜の外国市場で儲けるテクニック」 明日香出版社

「FX 最強投資術」 実業之日本社 「利確と損切りのタイミングを読む」明日香出版社

「学校では教えてくれない投資と金融の授業」 明日香出版社


<連載コラム>

ザイFX「戦う女のマーケット日記」(ダイヤモンド社)
http://zai.diamond.jp/list/fxcolumn/mochida


<持田有紀子公式ブログ>

http://ameblo.jp/mochidayukikodesu/


<自己紹介>

野村證券の初期女性総合職としての兜村が、私の仕事の出発点でした。

金融マーケットに関わる人々やものごとの酸いも甘いも嚙み分けて、大規模な組織に属しない一個人でも、どうやったら戦い続けることができるのかを追求してきました。

金融マーケットへのアクセスは誰にでもかなり容易になった昨今、価値ある有意義な情報を一人でも多くの人に届けたいと考えています。

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